西天北五町地域(幌延町、豊富町、天塩町、遠別町、中川町)は、北海道北部に位置し、サロベツ原野をはじめとする自然豊かな環境に恵まれ、酪農・畑作・稲作などの農業が盛んな地域です。
  
 この地域の「廃棄物処理」には特徴があり、それぞれの町が個別に処理を担うのではなく、コスト減を目的として、五町の廃棄物を一括で収集・処理を行う広域処理システムを展開しています。こうした広域連携による実施体制<西天北五町衛生施設組合>を昭和中期という全国的にも早い段階で構築していたことでも、本地域は広く認知されています。
 

 西天北五町衛生施設組合は、当初から循環型社会の形成を理念とし、莫大な費用がかかりCO2排出源となる燃焼炉を保有せず、家庭生ごみの堆肥化から分別・リサイクルの最適化など、廃棄物処理において再資源化システムの導入を進め、可能な限りの資源回収と埋立容量の減量化を徹底してきました。
 
 しかしながら、こうした努力の上でも、昨今は最終処分場の埋立容量が想定を上回る規模で圧迫しつつあり、新たな最終処分地の確保と、更なる埋立処分量の減量化が急務となっています。

『増加の一途を辿る、使用済み紙おむつ』
 
 埋立容量の圧迫は、高齢化に伴う「使用済み紙おむつ」の増加が主要因にあります。使用済み紙おむつは全国規模でみても年間270万t程ずつ増え続けており、西天北五町地域をはじめ、高齢化が進む多くの地域において深刻な課題として急浮上しています。
 
 また、紙おむつは使用前の3倍の容量に膨らむため、焼却による灰化ののち、埋立を行うのが一般的な処理方法として認知されています。一方、西天北五町衛生施設組合では前述した通り燃焼炉を保有していないことから、未燃焼のまま埋立を行っており、このことが埋立量をさらに増加させる要因となってしまっています。
 

 

▲紙おむつの生産量も増加している(日本衛生材料工業連合会HPより引用)

『使用済み紙おむつの燃料化に向けて』
 
 このような大きな課題を抱える中、西天北五町衛生施設組合は、燃焼せず、埋立量を増やさない方法として、平成26年頃から使用済み紙おむつの再資源化(燃料化)を模索し始めます。いままで埋立するほか無かった使用済み紙おむつを燃料ペレットに加工し、地産地消のエネルギー源として有効活用を図る試みです。
 
 富良野市が先行的に実施していた衛生用品資源実証実験(平成25~27年度)等を参考にしつつ、使用済み紙おむつ燃料化の課題とされていた、燃焼時の悪臭や灰の発生等の問題を解決するため、様々な行政機関やメーカー等と実現性に向けた検証を重ねてきました。
 

  

 
 
 その結果、使用済み紙おむつに木質チップを混合し、ペレット化することで、悪臭や灰の問題が緩和されるほか、燃焼の安定性を図れることが明らかに。このことを踏まえ、五町間での合意形成を図り、平成29年度には北海道(新エネルギー設計支援事業)の補助金を活用しながら、使用済みおむつと木質バイオマスからボイラーの燃料を製造する「使用済み紙おみつ燃料化施設」の設置に向けて、設計を開始します。
 
 「使用済み紙おみつ燃料化施設」には、使用済み紙おむつの破砕・滅菌・乾燥を進める原料化設備、木質バイオマスの保管ヤード・チップ化設備、混合を行うペレット化設備の導入を想定。製造した混合燃料は、幌延町内の特別養護法人に専用燃焼器を導入し、試験利用を実施できるよう体制を整えているところです。
 
 施設の整備は循環型社会形成推進交付金等の活用を想定しつつ、平成31年度から平成32年までに実施予定とのこと。
 使用済み紙おむつの処理という高齢化に伴う地域の課題を解決すると同時に、地産地消のエネルギーを作り出し、CO2排出抑制にも繋げるー。循環型社会の更なる進展に向けた取り組みが、西天北五町地域で生まれようとしています。
 
 

西天北五町衛生施設組合事務長 大塚さんより、今後の取り組みや展開についてお伺いしました。
 
「使用済み紙おむつと木質チップの混合燃料には有用性が認められましたが、まだまだ実用性が確立されたものではありません。施設の導入を進めると同時にメーカー等の協力者と共同開発を図り、問題をひとつひとつクリアにしながら進めていく予定です。将来的には使用済み紙おむつの埋立を無くし、地域内の温浴施設など、ボイラーを保有するあらゆる施設で活用できるにしたいと考えています。」
 

 
 
 
「木質チップの調達も、可能な限り地域にあるバイオマス資源を有効活用するよう検討を進めています。特に、付加価値をつけることが難しい剪定木などの産業廃棄物となるようなものや、林地に放置されている残材などの活用を図ることができれば理想的です。調達を通して地域林業における雇用の創出につなげるなど、横断的に地域へ利が生じる取り組みにしていきたいと考えています。」
 


[本件に関するお問合せ] 
 
西天北五町衛生施設組合
住所:北海道天塩郡幌延町字幌延884 電話:01632-5-1154
取材協力:西天北五町衛生施設組合事務長 大塚さん