共助共生型まちづくりと温暖化対策(実施地域:夕張市 取材年月:2015年10月)

自然エネルギーを使った野菜栽培(一般社団法人らぷらす)

就労支援の一環として、自然エネルギーを使った野菜栽培に取り組む
photo1.jpg かつて炭鉱のまちとして栄えた夕張市。現在、地域の再生に向けて取り組むこのまちで、地域課題の解決に貢献し、さらに高齢者や障がい者も生き生きと暮らせるような地域社会を見据えたまちづくりに取り組んでいる団体があります。
 一般社団法人らぷらす(以下、「らぷらす」)は、廃校になった旧夕張小学校を拠点に、障がい者の就労支援として自然エネルギーを使った野菜のハウス栽培に取り組んでいます。
体育館の中にビニールハウスを4棟建て、その中でホワイトアスパラやチコリを通年で栽培し、それに必要なエネルギーの全てを自然エネルギーでまかなっています。夏の間は貯雪槽の雪氷熱を、冬の間は牛糞堆肥の発酵熱を、不凍液と熱交換し、それでできた冷水や温水を、ポンプで栽培床内に循環させて、温度管理を行っています。

photo2.jpgポンプを動かす動力は、校舎の裏にある閉鎖坑道から自噴している鉱泉を使って、水車を回して発電し、使用しています。湧き水なので冬に凍ることもなく、発電設備の設置もそれほど大変ではなかったそうです。
また、夏場の温度管理を効率的に行うため、一年中安定した温度を保つ地中熱の活用も始めました。体育館内の空気を、地下3メートルに埋めたパイプの中に通して17度程度まで冷却し、その空気を、チコリの水耕栽培用のスペースに吹き出します。チコリの水耕栽培は実験的に行っているそうですが、順調に生長しているそうです。

地域にも貢献できる就労支援
photo3.jpg 「らぷらす」は、障がい者の就労支援のため、当別町にある社会福祉法人の事業の一つとして夕張市で活動を開始し、その後一般社団法人となって活動しています。最初に取り組んだのは、葬儀場を兼ねていた地域の会館の管理で、その後地域の役に立てる仕事をしようと、高齢者向けの配食サービスを開始しました。夕張市は高齢化率約45%の超高齢化地域のため、食事に関するニーズがあるのではと考えてのことでした。
 調理や配達を担う「らぷらす」の利用者も増え、配食サービスの需要も徐々に増えてきたため、働く場所を増したいと市役所に相談したところ、ちょうど同時期に北海道大学と設備会社が自然エネルギーを使った野菜栽培の事業化に向けて実験設備を設置できる場所を探していたため、廃校となった旧夕張小学校を拠点に、共同で取り組むことになりました。
photo4.jpg 学校内には、野菜栽培のほか、地元の農家から提供してもらった野菜や、校庭跡に作った畑で栽培した野菜を中心にしたバイキングが食べられるカフェがあり、そこでも「らぷらす」が就労支援している人たちが交代で働いています。カフェには、地元の人や観光客など、一日15~25名程度が訪れるそうです。
また、地域の人にも呼びかけて、空き教室の有効活用にも取り組んでいます。会社の事務所として教室を貸したり、ボイストレーニングやピアノの集中レッスン、視聴覚室を使ってヘルパー講習会、理科室で陶芸教室などを行ったりしているほか、親子で使えるスペースや、被災地や過疎地域に図書館や図書コーナーを設置する「みんなのとしょかんプロジェクト」の協力を得て作った図書スペースもあります。

夕張の歴史を引き継いで、互いに助け合う社会を作りたい
「らぷらす」の代表・安斉尚朋さんに、これからの取り組みについてお聞きしました。
「設備は整っているので、野菜の栽培は今後も続けたいです。カフェで働く就労支援サービスの利用者と話し合って必要な野菜を栽培し、将来的には、彼ら自身が自然エネルギーの設備について説明できるくらいになったらいいと思っています。
地域にも還元できる取り組みもすすめたいと思っています。今は考案段階ですが、『らぷらす』で行っている児童のデイサービスのほか、働くお母さんへの子育て支援を、保育士の資格を持った退職者や地域の元気な高齢者の方に手伝ってもらったり、栽培した野菜の出荷を高齢者の方に手伝ってもらったり、地域の中で役に立ちたいと思っている方々に仕事をお願いして、その対価を、地域の飲食店で使えるポイントにする、といったことができたらと考えています。
『らぷらす』の語源は、フランス語で『広場』や『みんなが楽しく集まる場所』という意味です。誰もが集まれる場にしたい、という思いでつけました。夕張には、昔から友子(ともこ)制度という、全国各地から集まった炭鉱夫たちが、お互いに助け合う仕組みがあったそうです。障がい者は障がい者、高齢者は高齢者と分けてしまうのではなく、『らぷらす』が支援している人も、高齢者も、地域の中で助け合いながら一緒に暮らしていける社会になるよう、夕張に根付く共助共生の歴史を引き継いで、活動していきたいと思っています」。

【写真1】夕張駅から徒歩10分のところにある旧夕張小学校。
【写真2】ビニールハウスにしたのは、冬場に働く人が少しでも寒くないようにと気遣ってのこと。
【写真3、4】カフェや図書スペースには、地元の人をはじめ多くの人が訪れる。
 ※写真2、3は、一般社団法人らぷらす提供

[自然エネルギーを使った野菜栽培 に関するお問合せ]    ・本事例のPDFはこちら

一般社団法人らぷらす
(夕張市平和1番地44)
TEL 0123-53-3377
FAX 0123-53-3378

photo5.jpg 代表理事の安斉尚朋さん。