「集まって暮らす生活」で温暖化対策(実施地域:余市町 取材年月:2015年7月)

エコビレッジ(特定非営利活動法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト)

持続可能な新しい暮らし方の学び舎
photo1.jpg 「住民が互いに支えあう仕組み」と「環境に負荷の少ない暮らし方」を求める人たちが、意識的に創るコミュニティ(※1)であるエコビレッジ。世界各地に広がるエコビレッジの暮らしを体験できる場が、北海道余市町にあります。
photo2.jpg余市町登町にある「余市エコカレッジ」は、もともと果樹園だった約2・5ヘクタールの土地に、学び舎やシェアハウス、ボランティアスタッフのためのコンテナハウスがあり、自給用の菜園と、果樹園、そしてコミュニティファームを備えています。
 ここでは、地域の農家などと連携して「持続可能な暮らしと地域づくり」を座学と実践で学ぶ通年プログラムを開催しているほか、大学や企業、市民団体向けのグループ研修、様々な機関との実践研究、地域住民と連携したまちづくりの実践なども行っています。
photo3.jpg 2014年に完成した学び舎は、「持続可能な暮らしと地域」を実現するための学びと、学んだことを仕事や仕組みづくりに活かすための試行・実践の中心となる場です。建物自体も環境に配慮しており、外装、内装には道内の間伐材やFSC認証材(※2)、古材を活用し、断熱材も道内の間伐材などを原料とする、木質繊維から作られたものを使っています。断熱気密に優れているおかげで、真冬でも室内が10度を下回ることはほとんどなく、薪ストーブ1台で暖房をまかなえているそうです。また、設置しているバイオマストイレは、アジア・アフリカ向けに開発されたもので、水も電気も使わずに生成物を肥料として再利用することもできます。

※1 北海道エコビレッジ推進プロジェクトHPより抜粋。
※2 環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林からのものであることを保証する認証制度。(FSCジャパンHPより抜粋)

一人ひとりの暮らしと、社会が抱える課題の解決をつなげる
 ここを拠点に、エコビレッジの推進に取り組んでいるのは、特定非営利活動法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト(以下、HEPP)です。

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 HEPPは、2009年から、長沼を中心に自給自足的で自然と共生した暮らしを体験できる塾を開催していました。2011年、新たなステージとして、地域のなかで幅広い世代が共に生活し、暮らしに関わる様々な社会課題の解決につなげるための新たな拠点づくりを、余市町で開始しました。そして2014年、「余市エコカレッジ」がスタートしました。
 HEPP代表の坂本純科さんは、元公務員。日々の公務や、プライベートで携わっていた市民活動やNPO活動では、テーマやセクションで活動が分かれてしまい、地域課題を本質的に解決するのは難しい、と感じていたそうです。そんな折、テーマやセクションを超えて、暮らしに関わることを全部一緒に解決しているエコビレッジの存在を知り、ヨーロッパで様々なエコビレッジについて学んだ後、HEPPを設立しました。
 「私自身が人と暮らすのが好きなこともあり、自分の生活として集まって暮らすということと、公務員時代に感じていた問題意識が、『エコビレッジ』という暮らし方でひとつにつながりました。ヨーロッパのエコビレッジでは、住宅は住宅、福祉は福祉という分け方はせず、暮らしに関わることを全部一緒に考え、住民が話し合って、問題を解決しています。住民も、子育て中の人から高齢者まで多様です。人が集まることで小さなお店ができたり、地域の学校に通う子どもを通じて地域とのつながりもできたりします。暮らしは社会の資源なんです」。

持続可能な暮らしへのステップアップの場を目指して
 「エコビレッジ設立の地に北海道を選んだのは、食とエネルギーの自給が現実的なスケールでできる可能性があるからです。食やエネルギーの自給というと、伝統的な農村社会と同じと考える人もいますが、伝統的な農村社会とエコビレッジとでは、合意形成の仕方が異なります。エコビレッジでは、伝統的な農村社会のように、世襲制や『昔からこうだから』という理由で意思決定がなされることはありません。嫌なら断る自由があります。
 それに、北海道では、ふるさとは『つくるもの』で、よそ者にもオープン。ここ余市でも、最初は半信半疑だった地元の人も、学び舎が完成してからは面白がって集まってくれるようになりました。今は隣町の農家も含めて協議会を立ち上げ、地区全部をエコビレッジ化しよう!と取り組んでいます。
 今後は、地域でのエネルギー自給に向けた事業や、ここで栽培した果物を使って、カフェもやりたいと考えています。1人で持続可能な暮らしを始めるのは大変です。だから、ここでみんなで学んで、各々の生活に活かしていったり、グループで実験したり、持続可能な暮らしへの中継地点のような場になったらいいなと思っています」。
【写真1】行政の補助金の他、クラウドファンディングで約120名から資金提供を受け、道内の約40名のボランティアを含む総勢約60名の手で建設された学び舎。研修や会議、イベントなどでも利用可。
【写真2】米麹と砂糖をいれて使うバイオマストイレ。アンモニア化しないのでにおわない。
【写真3】使っている薪ストーブ。2時間程度で、家中が温まるそう。
【写真4】2013年に考えた未来予想図。果物やワイン醸造が盛んな地域ならではの計画。

[エコビレッジ に関するお問合せ] ・HPはこちら   ・本事例のPDFはこちら

特定非営利活動法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト
余市エコカレッジ(余市郡余市町登町1863)
TEL/FAX 0135-22-6666
URL http://ecovillage.greenwebs.net/

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代表の坂本純科さん。手にしているのは、取材中、偶然立ち寄ってくれた近所の果樹農家さんがくれたさくらんぼ。