賃貸住宅で温暖化対策(実施地域:当別町 取材年月:2014年7月)

ペレットストーブ&菜園付きエコアパート(かたくりの里とうべつ「空」)

エコアパートかたくりの里とうべつ「空」

2014年春、札幌から電車で約40分のところにある当別町に、環境配慮型のアパートが完成しました。かたくりの里 とうべつ「空」です。

図1.jpgこのアパートの特徴は、暖房設備にペレットストーブを導入していることです。ペレットはもちろん道内産で、地域の燃料店が各世帯の保管庫にまとめて配送してくれます。また、外壁や内装には全て道産材を用い、断熱材にも道内の間伐材などを原料とする木質繊維断熱材を使用しています。さらに、地熱を利用するためのアースチューブが、菜園の下に埋設されています。このアースチューブからの熱を、2階に設置されたサーキュレーターで室内に循環させて、夏は涼しく、冬は暖かくなるように設計されています。
積雪量が多く、寒い日にはマイナス20度にもなる当別町で、温暖化の原因となる化石燃料の使用を抑え、快適に冬を過ごすことができるアパートです。

図2.jpg「空」を経営しているのは、当別で数十年アパート業を営む大澤産業株式会社です。
現在の代表取締役、大澤俊信さんは、東京の大手企業に勤めていた頃から「いつかは家業を継がなければ」との思いで、アパート経営に関する勉強会に参加していました。その中で、足立区にある畑付きエコアパートを知り、実際に足を運んで、エコアパートの構想を練っていたそうです。
当別に戻った大澤さんは、環境配慮型住宅に強い道内の業者と協力して、ペレットストーブ全室導入、道内産木材100%使用、各世帯専用の菜園付きエコアパートを完成させました。

【写真1】 2階も使用できるメゾネットタイプで、計4世帯が居住できる。外壁と内装には、全て道内産の木材が使われている。日当たりのいい南側には、各世帯専用の菜園(約20㎡)があり、菜園の水やりに使える雨水タンク(写真左下のドラム缶)も各世帯に設置されている。

【写真2】 マンションや6畳間にも設置でき、天面で調理もできるタイプのペレットストーブを全室に導入。南側の菜園に面した土間に設置してある。

環境問題から取り残された賃貸住宅
図3.jpg全国的に見ても、エコアパートはまだまだ珍しい存在です。その理由について、大澤さんは、次のように話しています。
「初期投資を短期間で回収し、5年、10年で次に向けた投資をするアパート経営の常識からすると、エコアパートは初期投資が大きく、回収に時間がかかりすぎます。だから、これだけエネルギー問題や、環境問題が叫ばれているにも関わらず、賃貸住宅だけ取り残されています。環境政策はたくさんありますが、賃貸住宅の場合、入居者が環境に配慮した暮らしをしたいと思っても、アパート自体が環境に配慮していなければ、図4.jpgその対象にすらなりません。『空』は、無添加・自然素材にこだわり、環境と入居者の健康の両方に配慮したアパート。高品質な住居環境を提供すれば、家賃に関わらず一定以上の入居率を確保でき、長いスパンで見れば経営として成り立つと判断しました」。

【写真3】 冬は暖気、夏は地下の冷気を循環させる換気システム。穴のあいた仕切りと、穴のない仕切りを入れ替ることで循環させる。とてもシンプルな仕組み。

【写真4】 木質繊維断熱材(200㍉)は、高性能グラスウールと同等の断熱性能があるだけでなく、熱容量が高く周囲の温度影響を受けにくい、木材の特性である調湿性能で湿度をコントロールできる等、様々なメリットがある。

若者が戻ってくる町を目指して
「当別は、札幌に近いがゆえに、若者が離れて戻ってきにくい町です。地域に若者や新しい人を呼ぶには、地域の産業や魅力が不可欠だと感じています。『空』を建てる時にペレットにこだわったのは、豊富な森林資源がある当別では、近い将来、ペレット産業が地産地消の産業の一つになる可能性があると考えたからです。地域の住人が、地域の資源を使って産業を生み出すことで、自身の生活を見つめ直し、再生可能エネルギーを身近に感じることにもつながります。今の目標は、地域で消費する灯油の量を半分にして、残りを自分たちのエリアで賄えるようにすること。『空』とペレットストーブをきっかけに、当別での再生可能エネルギーに関する興味・関心を高めていきたいと思っています。そして、地域に新しい人を呼び、若者が戻って来たくなるような町にしたいと考えています」。
最後に、当別への熱い想いとビジョンを持つ大澤さんに、次に建ててみたいアパートについて、聞いてみました。
「トイレを雨水かバイオ利用にして、それが菜園に活用される仕組みのアパートを建ててみたい。風が強い気候を活かして、風力発電も取り入れてみたいと考えています」。

[かたくりの里とうべつ「空」に関するお問合せ]  ・HPはこちら    ・本記事のPDFはこちら

 大澤産業株式会社(当別町)
  住所:当別町白樺町60
  電話:0133-27-5006

図5-1.jpg代表取締役の大澤俊信さんのおじいさんの代に、当別に移り住む。アイスクリームのスティックなどを作る製造業を営んでいたが、昭和50年、北海道医療大学が当別に移転したことをきっかけに、アパート業に転向。北海道科学大学(旧北海道工業大学)寒地環境エネルギーシステム研究所の協力のもと、「空」の室内環境性能の実測調査を、今年度からふた冬かけて行う予定。