宿泊施設で温暖化対策(実施地域:弟子屈町 取材年月:2014年12月)

温泉熱を活用したペンション(レイクサイドリゾート クッシャレラ)

温泉熱を活用した灯油使用ゼロのペンション
道東の阿寒国立公園にある、世界有数のカルデラ湖、屈斜路湖。その湖畔近くに、再生可能エネルギーにこだわり、灯油使用ゼロを達成したペンションがあります。レイクサイドリゾート「クッシャレラ」です。
図1.jpg「クッシャレラ」では、オーナーの松室勲さんが考案した、温泉熱を取り出して利用する仕組みを使っています。200メートルほど離れた別荘地の源泉から温泉を引き、酪農家から譲り受けた、ステンレス製のミルククーラー(2000リットル)に溜めます。ミルククーラーには、暖房用の不凍液と、給湯用の水を通すパイプが入り、約60℃の温泉と熱交換して40~45℃まで温められます。不凍液は、ペンション中をめぐって部屋を温め、さらにお風呂の床に敷かれたテラコッタのタイルも温めます。給湯は、加温の必要もなく、そのままシャワーや調理に使用しています。
図2.jpg熱交換した後の温泉は、お風呂のお湯としてちょうど良い温度になるので、かけ流しの内湯と露天風呂に送られます。
さらに、暖房や給湯に使った後の温泉も無駄にしていません。別のミルククーラーにためて熱交換、温められた不凍液のパイプを玄関前の石畳の下に通し、ロードヒーティングの熱源として使用するほか、ペンション横の畑下にも不凍液を通して、寒い季節でも野菜を作れるように設計しています。12年前の創業以来、大きなトラブルはないそうです。
また、建物の断熱にもこだわり、窓も3層ガラスを使っているので、温泉熱だけでも温かく過ごせるようになっています。それだけで寒い場合は、薪ストーブで暖をとれるようにしています。さらに、屋根には小型の風力発電機と太陽光パネルを設置しており、照明などの一部の電力をまかなっています。
北海道では、暖房や給湯の灯油使用が全国平均と比べて多いのが特徴ですが、灯油は暖房と給湯の非常用として設置してあるボイラーを、メンテナンス時に動かすくらいで、基本的に使うことはありません。また、使用している化石燃料は、調理用のガスのみです。温泉熱という再生可能エネルギーを最大限に活用して、ペンションを経営しています。
図5.jpg図4.jpg図3.jpg










【写真1】 ヨーロッパの田舎の家をイメージして、石壁で作ったペンション。客室は全3部屋。徹底して健康にこだわり、壁は漆喰や珪藻土、フロアや家具には無垢材を使い、床はテラコッタのタイルを敷いている。温泉熱利用のアイディアは、松室さんご自身によるもの。
【写真2】 温泉熱交換のミルククーラー。仕組みはとてもシンプル。クッシャレラの取組を見て、同じ仕組みを取り入れた所もあるそう。写真右は松室さん。
【写真3】 ミルククーラー内部。水や不凍液の通ったパイプが入っている。パイプの長さは200メートル。
【写真4】 屋根に設置してある小型風力発電機。風力と、太陽光発電を合わせて900Wの電力をまかなう。
【写真5】 補助暖房用の薪ストーブ。

エコツアーで訪れたデンマークの取組に感銘
松室さんが再生可能エネルギーに注目したのは、全国紙の新聞記者だった頃、北海道の団体が主宰したデンマークへのスタディツアーに参加したことがきっかけでした。ツアーで再生可能エネルギーの研修施設「風のがっこう」を訪れ、市民レベルで環境に配慮した仕組みが作られ、生活に根付いていることに感銘を受けたそうです。
「デンマークは、高福祉社会で、消費税は日本よりずっと高いですが、誰も損をしないような社会の仕組みができていました。空き瓶の徹底したリユースやレンタサイクル、農家による風力発電や糞尿を使ったバイオガス発電など、先進的な取組がたくさん行われていることを知り、目からウロコが落ちる思いでした。もともと、ツーリングが趣味で北海道に憧れを抱いていたことや、メカ好きだったこともあり、定年後は北海道で再生可能エネルギーを取り入れたペンションをやろうと思っていました。再生可能エネルギーが普及してきた現在とは異なり、当時は太陽光発電や風力発電の初期投資は大きく高価だったうえ、売電まではハードルが高くできませんでしたが、当時できる最大限のことをしたと思っています」。

「エコ」とはちょっとした工夫のこと
新聞記者から、ペンション経営者に転身した松室さんに、ペンションでできる取組についてご意見を伺いました。
「温泉が豊富なところでは、温泉にただ入るだけだったり、温泉を直接床暖房に使って、目詰まりを防ぐために太いパイプに温泉を流しっぱなしにしたりすると聞きます。それだと、温泉がいくらあっても足りません。温泉は温度も湯量も不安定ですが、賢く使えば、給湯も、暖房もまかなえます。エコとはちょっとした工夫のことなのではないかな、と思っています」。


[温泉熱を活用したペンション に関するお問合せ] ・HPはこちら   ・本事例のPDFはこちら

レイクサイドリゾート クッシャレラ 
 住所:川上郡弟子屈町屈斜路市街3-2-3
 電話: 015-484-3232
 FAX: 015-484-3233

オーナー.jpgオーナーの松室さんは、元全国紙新聞記者。道東の魅力にとりつかれ、屈斜路湖畔に移住。徹底した健康志向で、建築材にもこだわり、再生可能エネルギー取材の経験から温泉熱を最大限に利用し、太陽光発電や風力発電も設置し、灯油利用ゼロの省エネペンションを実現。