小規模集落再興と温暖化対策(実施地域:下川町 取材年月:2014年9月)

バイオビレッジ(下川町 環境未来都市推進課)

小規模集落の再興
木質バイオマスでエネルギーを自給する集住化モデルを形成し、次世代に向けた持続可能な地域をつくる。これらを目的に作られた、環境未来都市(※1)下川町の「一の橋バイオビレッジ(※2)」をご紹介します。
図1.jpg一の橋地区は、下川町市街地から約10キロのところにあります。かつては林業で栄え、鉄道も走っていた地域ですが、現在の人口は約140人、世帯数は全部で65世帯、高齢化率は約50%です。
地域を再興するため、数年にわたって地区の住民、行政、地域おこし協力隊(※3)等が話し合いを続けていました。話し合いの末、自律して暮らしていける地域を目指し、バイオビレッジ構想が作られました。
バイオビレッジ構想は、次の5つを基本にしています。
①地域を担う人財を確保すること
②地域資源を最大限に活用し、小規模ビジネスを数多く起こすこと
③バイオマス等を活用した集住型の住環境を整備し、環境負荷を低減した地域を形成すること
④住民の生活支援システムを構築すること
⑤地域課題の解決に向け、高度な知識、技術を導入すること
このバイオビレッジ構想を基に、2013年5月に完成したのが「一の橋バイオビレッジ」です。

【写真1】 26世帯が暮らす「一の橋バイオビレッジ」。一の橋の住人をはじめ、地域おこし協力隊等が暮らしている。一の橋に住む人たちは、地域おこし協力隊が困りごとを助けてくれる「見守りサービス」を受けられる。

※1 環境未来都市
環境や高齢化など人類共通の課題に対応し、環境、社会、経済の三つの価値を創造することで「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」の実現を目指す、先導的プロジェクトに取り組んでいる都市・地域として国が選定。
※2 バイオビレッジ
持続可能な生産活動や自然生態系の復元を可能とする自然との共生、調和のとれた緑豊かな集落という想いが込められた造語。
※3 地域おこし協力隊
人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的に国が支援する制度。

地域資源を活用して自立して暮らせる場所に
バイオビレッジは、人が集まって暮らすスタイルの住宅で、コレクティブハウス、または集住化住宅と呼ばれています。
図2-1.jpg下川町の厳しい冬に対応した、高断熱性能の住居が全部で26戸あり、複数戸から成る住居棟6棟に分かれています。住居形態は、3LDK、2LDK、1LDK(メゾネットタイプ)の3種類で、様々な世帯構成に対応できるようになっています。
また、これらの住居棟は、屋内化された共有の廊下で繋がっているので、玄関前の雪かきなど、住民の負担を大きく減らすことができます。
ビレッジ内には、地域おこし協力隊が駐在し管理人を務める住民センターがあり、警察立ち寄り所や、郵便局も併設されています。また、交流プラザの「駅カフェイチノハシ」では、飲食のほか、必要最低限の日用品の販売も行っています。
ビレッジ内の全ての施設と、近隣施設の給湯と暖房をまかなっているのが、木質バイオマスボイラーです。バイオビレッジの熱供給施設には、バックアップ用も含めて2機設置され、町内の間伐材等からできたチップを燃料として使用しています。燃焼によって出た灰も、農地の土壌改良材として活用しています。また、近隣施設では、ボイラーの熱を活用して、木のオガ粉を使った菌床しいたけを栽培し、地域住民の雇用を生み出しています。
さらに、熱供給施設の屋根には太陽光パネルが設置されており、ボイラーの運転動力をまかない、住居の電力の一部も自給しています。
図3.jpg図4.jpg

【写真2】 各世帯をつなぐ廊下。月に一度、住民みんなで清掃をする。
【写真3】 給湯と暖房をまかなう、木質バイオマスボイラー(550kW)。
【写真4】 十数名が働く、しいたけの栽培施設。近隣市町村をはじめ、全国にも出荷している。


一の橋をモデルに他地域への展開を目指す
今回取材に対応して下さった、下川町環境未来都市推進課の仲埜公平さんに、バイオビレッジをこれからどのように発展させていくのかをお聞きしました。
図5-1.jpg「ひとまず集住化の仕組みはできましたが、バイオビレッジ構想のプランはまだ完成していません。住民の交通の便を良くしたり、診療所や日常的な遊び場などがあればもっと暮らしやすくなると考えています。ボイラーの温水熱の利活用もすすめたい。バイオビレッジに実際に住んでいる方からの評判はよく、今では空きが出ると抽選になるほど。町内外からの視察者も多く、住んでみたいという他の地区の人もいます。今、別の地区の住民からも集住化住宅にしてほしいという声があり、準備をすすめています」。

【写真5】 今回取材に対応して下さった仲埜さんも、一の橋の住民。

[一の橋バイオビレッジ に関するお問合せ] ・HPはこちら    ・本記事のPDFはこちら

下川町環境未来都市推進課
 住所:下川町幸町63番地 
 電話:01655-4-2511

図6-1.jpg旭川から北に約100キロのところに位置し、人口約3500人。町面積の9割を覆う森林資源を活用した取組が全国的に注目されている。一の橋地区の取り組みを通し、地域資源を最大限に生かした森林未来都市を目指す同町のチャレンジを紹介した「エネルギー自立と地域づくり創造(中西出版)」を、2014年7月に刊行。