農業と観光のまちの環境改善と温暖化対策(実施地域:鹿追町 取材年月:2015年11月)

バイオガスプラント(鹿追町環境保全センター、鹿追町役場農業振興課)

地域資源の循環で、エネルギーと特産品を創出
photo1.jpg 十勝地方北西部に位置する鹿追町は、畜産を中心とする農業が主産業で、大雪山国立公園唯一の自然湖・然別湖を有し、年間80万人近い観光客が訪れる、農業と観光のまちです。
 鹿追町の市街地を囲む広大な農地の一角にあるのが、鹿追町環境保全センターです。ここでは、市街地に近い12戸の酪農家から集めた家畜ふん尿を主原料に、バイオガスや堆肥が製造されています。
 バイオガスは、家畜ふん尿などを嫌気性の微生物が分解することで発生するガスで、植物性飼料で育つ乳牛のふん尿を主原料とするため、燃焼させても温室効果ガスである二酸化炭素を新たに発生させない「カーボンニュートラル」なエネルギーのひとつです。
photo2.jpg 環境保全センターにある「バイオガスプラント」には、牛1320頭分に相当する量の家畜ふん尿が毎日搬入され、製造されたバイオガスは主に発電の燃料として使用されます。一日の発電量は約6000kWhで、現在は売電を中心としており、得られた収益を基金に積んで、施設の修繕費用などに充てているそうです。ほかにも、都市ガスの代替として使用できるように精製圧縮し、町役場のガス給湯器や公用車の燃料としても使用しています。これらの取り組みにより、年間約1500トン(2014年度実績)の二酸化炭素を削減しています。
 発電にはコージェネレーションシステムを用い、廃熱も有効活用しています。温水を作って、家畜ふん尿を発酵させる「発酵槽」の加温に使ったり、発酵時にできる液体(消化液)の殺菌消毒に使用したりしています。消毒された消化液は、においのない安全で良質な液体肥料として、市街地から10キロ圏内の農家で散布し、循環型農業を実践しています。さらに、温室を作ってマンゴーの栽培や、チョウザメを飼育しています。今年からは、新規作物であるサツマイモの長期保存も開始し、新たな特産品の創出を目指しています。
併設されている「堆肥化プラント」では、550頭分に相当する量の家畜ふん尿と、町内の家庭から出る生ゴミを原料に、町内の間伐材や家庭の剪定材を砕いて作ったオガ粉を混ぜて、堆肥を作っています。これも、町内の農家で使われています。
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地域課題を解決し、恩恵も得る
photo5.jpg 取り組みのきっかけは、農業と観光のまち特有の課題にありました。鹿追町には、年間を通じて全国各地から観光客が訪れ、また自衛隊駐屯地もあるため、多くの道外出身者が暮らしています。一方、市街地のすぐ近くにも農家があるので、秋に肥料として畑に散布した後の家畜ふん尿のにおいが、20年以上前から問題となっていました。
 そこで注目したのがバイオガスです。基幹産業である農業を推進しつつ、市街地の環境を改善しようと、行政が主導して取り組みが始まり、2007年10月にプラントの稼動を開始しました。
 鹿追町農業振興課の城石賢一さんは、次のように話しています。
 「地域住民と話し合いながら進めましたが、問題はやはり費用でした。プラントの建設にあわせて、個々の酪農家に家畜ふん尿を処理するための費用を負担してもらう必要がありました。改善しなければならなかったのは市街地のにおいだったので、市街地近郊の酪農家に、その費用を負担してもらわなくてはなりませんでした。最終的に、7~8年の年月を経て合意に達し、プラントを建設することができました。
 今ではにおいの問題は全くありませんし、家庭から出る生ゴミや下水汚泥も一緒に処理できているだけでなく、新しい特産物の創出にも一役買っています。施設は環境学習の題材としても使われ、鹿追町が小中高一貫教育の中で取り組んでいる『新地球学』の授業に組み込まれており、それ以外にも年間約2500人が視察に訪れます。
 一方で、課題もあります。今は売電のおかげで収益を得られていますが、今後の売電価格次第では逆に修繕・更新に係る支出が必要となる可能性もあります。また、鹿追町では酪農家毎に異なる経営事情を考慮し、プラントを個々の酪農家に建設する『個別型プラント』の方法は取っていません。その代わりに、地域の家畜ふん尿を一ケ所に集める『集中型プラント』という方法をとっているので、設備が巨大なため建設に莫大な費用がかかります」。

バイオガスから水素を作る新たな取り組みにも挑戦
 今後の取り組みについてもお話をお聞きしました。
 「市街地から少し離れた瓜幕地区の酪農家からの要望で、新しくプラントを建設することになりました。ここの2・2倍に相当するふん尿を処理でき、年間発電量約500万kWh規模のプラントを建設中で、2016年春に稼動します。また、2015年度から5カ年計画で、より利便性を高めつつ低炭素社会に貢献するため、バイオガスから水素を作る事業を、民間事業者が中心となって行っています。本格的に動き出す来年の秋口には、環境保全センターに道内初の定置型水素ステーションができる予定です」。



【写真1】鹿追町環境保全センター。バイオガスプラント、堆肥化プラントのほか、コンポスト化プラント、研修棟も併設している。
【写真2】バイオガスと堆肥化の2つのプラントに、合わせて1,870頭分の家畜ふん尿が毎日搬入され、ほぼフル稼働している。
【写真3】消化液を保管する貯留槽。消化液の使用により、化学肥料の使用も約25%削減できている。
【写真4】堆肥化プラント。発酵時に病原菌や雑草の種子が死滅するだけでなく、悪臭の元となる物質も低減される。
【写真5】マンゴー用ハウス。マンゴーは競合相手のいない冬期に出荷され、高値で取引される。


[バイオガスプラントに関するお問合せ]    ・本事例のPDFはこちら

鹿追町環境保全センター
(河東郡鹿追町鹿追北4線5番地)
[TEL/FAX] 0156-66-4111
鹿追町役場農業振興課
(河東郡鹿追町東町1丁目15番地1)
[TEL] 0156-66-4035