離島の防災とまちづくりで温暖化対策(実施地域:利尻町 取材年月:2014年9月)

自立・分散型エネルギーシステム(利尻町 防災広報係/環境エネルギー係)

離島の防災対策~危機感を覚えた3・11~
北海道北部の日本海に浮かぶ島、利尻島。島の西側に位置する利尻町で進められている、防災と低炭素型のまちづくりを兼ねた取組をご紹介します。
図1.jpg北海道本土の電力系統から独立した電力系統の利尻島では、ほとんどの電力を、昭和42年に稼働開始した北電のディーゼル火力発電でまかなっています。
火力発電の燃料である重油は、船で運ばれてくるため、災害時に安定して確保できる保証はありません。また、輸送に費用がかかるので、他地域に比べて価格が高いうえ、不安定な石油価格は、住民、特に高齢者の生活を圧迫しています。さらに、地球温暖化の原因でもある二酸化炭素の排出量が多いことも課題でした。
こうした課題を解消し、地域内のエネルギー自立に向けた取組を進めるため、利尻町では、平成17年に新エネルギービジョンを策定、平成21年には町内の笹をペレット化する実証実験などを実施してきました。
そんな中、平成23年3月、東日本大震災が起こりました。今回取材に対応して下さった、利尻町の防災広報係長兼環境エネルギー係長の佐藤弘人さんは、「もし、あのような災害が利尻島で起きたら、一体どうなるのか、危機感を覚えた」と言います。
東日本大震災を契機に、防災拠点の機能の強化を図り、非常用電源を確保すると同時に、再生可能エネルギーを進める可能性を探ることになりました。平成24年には、新エネルギービジョンをもとに、太陽光や風力だけでなく、海に囲まれた島であることを活かした水産系バイオマスなど、様々な再生可能エネルギーの導入可能性を調査する実証実験を行っています。

【写真1】 総合体育館「夢交流館」の小型の風力発電、1kW×4基。「1kWが4基の方が、万が一1基壊れても、残り3基が使えるから」とのこと。

町内への再エネ普及には離島ならではの課題も
町の災害時収容避難所でもある総合体育館「夢交流館」に、15kWの太陽光発電と1kWの小型風車を4基、そして体育館内には防災用LED照明を設置しました。太陽光発電と風車には、それぞれ蓄電池電源システムが導入されており、災害等の停電時でも、自立電源として活用できるようになっています。また、町庁舎への太陽光や蓄電池、コージェネレーション設備等の導入や、町内の公共施設や学校等をネットワーク化して電力使用量を町役場で管理するデマンド監視システムの導入など、公共施設への再生可能エネルギーの導入は、順調に進んでいます。
図2.jpgその一方で、一般家庭への再生可能エネルギーの普及には、離島特有の課題も出てきています。 平成24年、再生可能エネルギーと連携した取組として、電気自動車を公用車として試験導入し、平成25年には漁業者にも使用してもらいました。その結果、電気自動車の性能には問題はないものの、充電の手間が障害となってしまうことがわかりました。また、家庭向け太陽光発電なども、塩害に対する不安を抱く住民が少なくありません。
佐藤さんは、離島で再生可能エネルギーを推進する時の課題について、次のように話しています。
「住民の生活スタイルに合い、使いやすくて、かつメリットがなければ、一般の家庭に再生可能エネルギーを普及させるのは難しいのが現状です。また、再生可能エネルギーの機械や設備は、島にはない、町民が実際に見たことのないものであることがほとんどです。設備に関する専門的な知識を持った人材も、十分とは言えません。ふたつの異なる機械が、本当に組み合わせて使えるのか、メンテナンスはどうするのかなど、細かい技術的な部分は、エネルギー業界の人や、専門家でなければわからないことが多いと感じています」。

【写真2】 防災広報係長兼環境エネルギー係長の佐藤弘人さん。

地域資源を活用し島国のモデル地域に
しかし、一方で離島ならではの強みもある、と佐藤さんは言います。
図3.jpg「離島は人も物も限られています。だからこそ、地域資源を活用したまちづくりが必要です。抱えている課題はたくさんありますが、小さなコミュニティだからこそ、新しい取組を積極的に受け入れられるような雰囲気が出てこれば、地域資源を活用したエネルギーの自立に向けた動きも、より一層進むと思っています。今後、利尻島のスマートコミュニティビジョンを作り、現実に可能かどうかの調査を行う予定です。再生可能エネルギーはもちろん、エネルギー管理システムも積極的に活用して、低炭素型のまちづくりを進めていきたいと考えています。広く言えば、北海道も島、日本も島。島における地域資源を活用した再生可能エネルギーとまちづくりのモデルを、利尻島で作れたらと考えています」。

【写真3】 停電時、通常時共に使用できる太陽光発電。

[自立・分散型エネルギーシステム に関するお問合せ] ・HPはこちら    ・本記事のPDFはこちら

利尻町防災広報係/環境エネルギー係
 住所:利尻郡利尻町沓形字緑町14番地1
 電話:0163-84-2345

利尻富士.jpg北海道北端の稚内市から西方約53キロにあり、「利尻」はアイヌ語「リイ・シリ」で「高い・島」を意味する。島の中心にそびえる秀峰利尻山は、日本百名山のひとつに数えられている。水産業と観光業が盛んで、毎年春から夏にかけて多くの観光客が訪れる。