農産物生産と温暖化対策(実施地域:芽室町 取材年月:2015年11月)

農業残さの燃料化とソーラー式農機(芽室町企画財政課、株式会社フクザワ・オーダー農機)

特産品の生産で発生する農業残さの燃料化
photo1.jpg 芽室町は、海外でも高い評価を受けている長いもの世界的ブランド「十勝川西長いも」の生産地のひとつです。同町では、長いもの生産時に発生する農業残さの燃料化に取り組んでいます。
 長いもの栽培には、つるを絡ませるためにプラスチック製のネットを使用します。このネットは、絡まったつるを収穫後に全て取り除けば再利用も可能ですが、その作業や、回収後のネットの管理、保管が農家にとって大変な手間となるため、一度使用したネットはほぼ全て廃棄されています。廃棄費用は各農家の負担となり、町外の業者が処理しています。また、同じく芽室町内には、冬に多額の燃料代を支払うハウス栽培農家もいるため、ネットの廃棄とハウスの加温で町外に流出する多くの資金を何とかできないかと議論されていました。
 そこで、使用済みネットを燃料化し、ハウスの加温に使用することを目指して、2007年に公益財団法人とかち財団が中心となって「十勝地域における農業残さ燃料化新システム協議会」が立ち上がりました。現在では、使用済みネットと町内の間伐材や小豆殻などを原料に、様々に配合割合を変えたペレットを試行的に製造し、地域の宿泊施設で活用実験をしています。
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太陽光発電で動く農機の活用
 長いもの栽培には、再生可能エネルギーを使用した農機も使われています。長いもは、「プランター」という機械に種芋を積んで、一つ一つ手で植えていきますが、エンジンの排気口が作業をする人の目の前にあり排気が降りかかる上、大きなエンジン音の中での作業を強いられていました。プランターを製造している株式会社フクザワ・オーダー農機では、農家の相談を受け、2000年から太陽光発電で動くプランター「ソーラー式長いもプランター」の開発を始めました。
photo4.jpg 試行を重ねながら実用化し、現在は太陽光パネル4枚と800Wのモーターをつけたプランターを製造しています。問題だった排ガスはなく、また音もほとんどしません。発電した電気は、一度バッテリーに充電されるので、日が暮れても使うことができます。現在は、町内を中心に20~30件程度の農家で使用されているそうです。
株式会社フクザワ・オーダー農機の福澤剛志さんは、次のように話しています。
 「長いもプランターは早く動く必要がないため、800W程度の発電量でも晴れていれば一日中使うことができます。太陽光で動くので燃料が不要で、しかも二酸化炭素を排出しないというのが注目され、海外から問い合わせが来ることもあります。今は、より作業がしやすいよう、立ったまま植えられるソーラー式長いもプランターを試作中です」。

エネルギーの地産地消を目指し、次世代エネルギーパークにも認定
 芽室町では、太陽光や風力、バイオマス、雪氷冷熱など、様々な再生可能エネルギーの可能性を調査し、2009年に新エネルギービジョンを策定しました。その中から地域特性を活かせる太陽光とバイオマスに着目し、特産・長いも等の生産における取り組みに注力するとともに、町内の観光施設や企業、飲食店などにペレットボイラーやストーブ、太陽光パネルを設置するなど、エネルギーの地産地消に向け、町全体で連携し取り組みを進めています。
 こうした取り組みが評価され、2011年には、「次世代エネルギーパーク(※)」にも認定されています。
 芽室町での取り組みについて、同町企画財政課の中村宗紀さんと大西貴仁さんにお話を伺いました。
 「プラスチック製のネットを使ったペレットは、バイオマスのみのものより燃焼温度が高いため、使用するには専用のボイラーが必要です。そのため、現在は使える施設が限られており、専用の大型ボイラーを設置できる町内の宿泊施設で実証試験を実施しています。今後は、ボイラーも小型化して、ハウス栽培をはじめ様々な場所でこのペレットを使用できるようにする必要があると考えています。また、『十勝川西長いも』の栽培は、十勝地域の8つのJAにまたがっているため、使用済みネットの収集や運搬には近郊の自治体とも連携の可能性があります。今後も新エネルギービジョンの目標達成に向け、使用済みネットの燃料化と太陽光を中心に取り組みを進める予定です」。

※ 次世代エネルギーパークとは、再生可能エネルギーをはじめとした次世代のエネルギーに、実際に国民が見て触れる機会を増やすことを通じて、地球環境と調和した将来のエネルギーの在り方に関する理解の増進を図る計画を、経済産業省が認定するものです。
 次世代エネルギーパークは、これまで(平成19年度~25年度)に全国で56件が認定され、道内でも芽室町のほか、稚内市、下川町、札幌市、伊達市、足寄町が認定されています。
[引用元・詳細]
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/park/

【写真1】ペレット工場。もともと農薬の処分をしていた施設を工場として使用し、めむろシニアワークセンターが製造を担っている。
【写真2】使用済みネットとバイオマスとの割合を変えて作った試作品。間伐材など木質バイオマスだけのペレットも製造している。
【写真3】ペレットを作る機械。
【写真4】ソーラー式長いもプランター。

[農業残さの燃料化 に関するお問合せ]  ・本事例のPDFはこちら

芽室町企画財政課(河西郡芽室町東2条2丁目14番地)
[TEL] 0155-62-9721 [FAX] 0155-62-4599
[URL] http://www.memuro.net/

[ソーラー式農機 に関するお問合せ]

株式会社フクザワ・オーダー農機(河西郡芽室町西8条7丁目2番地3)
[TEL] 0155-62-2600 [FAX] 0155-62-5977
[URL] http://fukuzawa-order.com/

photo5.jpg芽室町の大西さん、めむろシニアワークセンターの関澤さん、芽室町の中村さん。


photo6.jpg株式会社フクザワ・オーダー農機の福澤さん。