地域循環型酪農と温暖化対策(実施地域:浜中町 取材年月:2014年12月)

水耕栽培の低炭素化(浜中町農業協同組合)

太陽光発電で作る牛乳
北海道東部、太平洋に面した浜中町は、冷涼な気候と広大な牧草地を活かした酪農が盛んな町です。浜中町農業協同組合(以下、JA浜中町)では、科学的な分析と徹底した品質管理に基づく高品質な牛乳を生産しているだけでなく、環境保全のための先駆的な取組を行っています。
図1.jpgその取組の一つは、組合員の酪農家約190戸のうち、105箇所で行っている太陽光発電です。各戸の敷地にそれぞれ10kW、地域全体で計1・05MWの太陽光発電システムを導入し、発電した電力は、搾乳機械や絞った牛乳を急速冷蔵するためのバルククーラー、換気扇などの動力として使用し、余剰分は北海道電力に売電しています。

機運が熟し一気に設置
JA浜中町では、15年以上前から、自然環境との調和や、地域社会の共存共生を目指した取組を行ってきました。原油価格が年々高騰し、エネルギーを大量に使う酪農経営の負担となっていたことや、二酸化炭素排出量を削減するため、JAの職員と酪農家が話合いながら、太陽光発電導入の可能性を模索していました。
当時、太陽光発電の設備は、10kWで約700万円という初期投資がネックでしたが、平成22年、農林水産省による農業者に対する太陽光発電補助事業をきっかけに、導入の機運が高まりました。
図2.jpg農水省の補助と中山間地域向け交付金を組み合わせて、各戸の投資額を6~7年で回収できる150万円程度にまで抑え、さらにJA が融資を用意するなどして、酪農家の最大限に負担を減らしました。そして、百軒以上の酪農家が導入に手を挙げ、申請から工事着工、完成までを半年間という短期間で一気に進めました。
完成から約3年が経ちましたが、大きなトラブルもなく、順調に稼働しています。

大切なのは、地域の人が生活していけること
図3.jpg今回取材に対応して下さったのは、JA浜中町の参事高橋勇さんと、営農課営農相談係長宮崎義幸さんです。高橋さんは、普段から酪農家といろいろな話をしていたことが功を奏した、と言います。
「浜中町では、JAと酪農家が普段から、地域をどうしていくか、さまざまな議論をしています。自分たちのことだけでなく、水や自然環境、地域の話をずっとしてきました。太陽光発電に対する農水省の補助を知ったのは、平成22年の秋でしたが、再生可能エネルギーについてもずっと話をしており、地域のイメージ向上というメリットや、金銭的な負担を回収する見通しも立てられたので、すぐに話を進めることができました。もし、こういった話ができる関係がなかったら、できなかったと思います」
「農村で太陽光発電を設置する場合に課題となるのは、接続する送電網の問題と、農地に対する規制だと思います。送電網については、3・11以降、再生可能エネルギーに関する情勢が大きく変わって、浜中町でも新規参入が相次いだため、既に送電網の受入容量を越えています。当初の目標は、地域の酪農家全戸に太陽光発電を導入することでしたが、すぐに達成することは難しくなってきています。また、農地の利用には様々な規制があります。建物には設置できますが、古い牛舎などは、強度の問題があるのでパネルを載せてもメンテナンス時に問題が起こる可能性があります。国のエネルギー政策が明確になり、パネルを農地に建ててその下で子牛を放牧したり、農機具の倉庫にしたりするなど、もっと柔軟に農地を活用できるようになれば、より可能性が広がると思います」
「道内では、未利用地を道外の企業に売り、その企業が再生可能エネルギー設備を導入したりする例が後を絶ちませんが、それでは地域資源による利益が流出してしまいます。私たちは、市民や銀行からお金を集めて、地元の人たちがやるべきだと考えています。そうすれば、設備にかかる税金も、売電の利益も地元に入ります。それを地域振興に使うべきです。道内でそういった動きがなかなか出てこなかったのは、なぜ自分たちでやるべきなのかという全体での議論や、動機付けが足りなかったからではないでしょうか。日頃から地域で議論をし、一般紙で報道されている程度のことを情報収集していれば、自分たちがどういう行動をすればいいか、わかるはずです」。
これからの展望についてお聞きしたところ、次のように仰っていました。
「一番大切なのは、農家や地域の人たちが、ちゃんとご飯を食べていけることです。地域に眠る資源の活用方法を、逃さず見つけたいと思っています。今は、家畜糞尿を利用したバイオガスで何かできないか検討しているところです。バイオガスでトラクターが走れたり、ボイラーでお湯を沸かしたりはもちろん、養殖場の動力にするといった、農業と漁業のコラボみたいなこともできたらと思い、情報収集をしています」。

【写真1~3】 浜中町内の酪農家が設置している太陽光パネル。パネルの設置工事は、町内の業者が担い、徹底した分業体制で約1ヶ月という短い工期で100件以上を完成させた。使用する電力量は、酪農家の規模によって様々だが、JA全体としてみると、自家消費と売電が半々くらいとのこと。

[小規模分散型メガソーラー に関するお問合せ] ・HPはこちら    ・本記事のPDFはこちら

浜中町農業協同組合 営農課 営農相談係
 住所:厚岸郡浜中町茶内栄5番地 
 電話: 0153-65-2141
 FAX: 0153-65-2236

高橋さん.jpg浜中町は、釧路と根室のほぼ中間に位置し、ラムサール条約にも登録されている霧多布湿原が広がる美しい自然に恵まれた町で、酪農と漁業が盛ん。浜中町農協は、牛乳の品質を良くするために、様々な先駆的取組を行っているだけでなく、地域社会との共存のために幅広い取組を行っている。写真は、今回お話を伺った高橋勇参事。